法人税 Q&A

Q.年度途中ですが、業績が非常に悪いので、役員給与を減額しようと考えています。税務上、どのような点に注意すればいいでしょうか?

A.役員給与の改定は、原則として、事業年度開始日から3か月以内に行わなければ、定期同額給与に該当せず損金算入が認められません。但し、「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」(業績悪化改定事由)により、役員に支給する定期給与が減額改定された場合、その事業年度の減額改定前後の各支給時期における支給額が同額であれば、定期同額給与に該当し、損金算入が認められます。
 業績悪化改定事由については、法人税基本通達9-2-13において、「経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいうのであるから、法人の一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことなどはこれに含まれないことに留意する」とされています。さらに通達の解説では、「例えば、経営の状況の悪化により従業員の賞与を一律カットせざるを得ないような状況にある場合は、通常は、本通達にいう『経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情』がある場合に当たるといえよう」と説明されています。しかし、従業員賞与の一律カットは1つの例示に過ぎず(しかもやや極端な場合であり)、この事例以外にどのような場合に、やむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情に該当するのか、必ずしも明確ではありませんでした。

 このため、国税庁は2008年12月に、「役員給与に関するQ&A」を公表し、業績悪化により役員給与を減額する場合の取扱いなどを示しました。このQ&Aの中で、業績悪化改定事由について、「財務諸表の数値が相当程度悪化したことや倒産の危機に瀕したことだけではなく、経営状況の悪化に伴い、第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情が生じていれば、これも含まれることになります」と説明しています。そして業績悪化改定事由による改定として、以下のような事例を挙げています。
①株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員給与の額を減額せざるを得ない場合
②取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合
③業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合

 さらに、Q&Aでは、「上記3事例以外の場合であっても、経営状況の悪化に伴い、第三者である利害関係者との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情があるときには、減額改定をしたことにより支給する役員給与は定期同額給与に該当すると考えられます」としています。なお、「業績や財務状況、資金繰りの悪化といった事実が生じていたとしても、利益調整のみを目的として減額改定を行う場合には、やむを得ず役員給与の額を減額したとはいえないことから、業績悪化改定事由に該当しないことは言うまでもありません」と留意的に示されているので、注意が必要です。

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