法人税 Q&A

Q.当社は上場株を所有していますが、その株価は大幅に下落しています。このため当事業年度に評価損を計上しようと考えていますが、税務上、留意すべき点を教えてください。

A.法人税法上、上場有価証券等については、その価額が著しく低下したことによって、評価損の計上ができるとされています。この場合の「価額が著しく低下したこと」については、法人税基本通達9-1-7において、①有価証券の事業年度末の価額がその時の帳簿価額のおおむね50%相当額を下回ることとなり、かつ、②近い将来その価額の回復が見込まれないことをいうものとされています。
 つまり税務上は、単に価額が50%以上下落しているという事実だけでは足りず、近い将来において価額の回復可能性がないことを立証することが、損金算入の要件になっています。しかし、どのような状況であれば、「近い将来回復が見込まれない」と言えるのか、その判断基準は必ずしも明確ではなく、税務上損金算入することに躊躇するケースも多かったようです。
 このため、国税庁は2009年4月に、「上場有価証券の評価損に関するQ&A」を公表し、税務上その評価損を損金算入するに当たっての取扱いの明確化を図りました。このQ&Aの中で、近い将来回復が見込まれないことについて、「法人の側から、過去の市場価格の推移や市場環境の動向、発行法人の業況等を総合的に勘案した合理的な判断基準が示される限りにおいては、税務上その基準は尊重されることとなります」との考え方を示しています。また、有価証券の評価損の損金算入時期については、「必ずしも、株価が過去2年間にわたり帳簿価額の50%程度以上下落した状況でなければ損金算入が認められないということではありません」としています。

 さらに、「専門性を有する第三者である証券アナリストなどによる個別銘柄別・業種別分析や業界動向に係る見通し、株式発行法人に関する企業情報などを用いて、当該株価が近い将来回復しないことについての根拠が提示されるのであれば、これらに基づく判断は合理的な判断であると認められるものと考えられます」と説明しています。
 なお、株価の回復可能性の判断の時期について、「株価の回復可能性の判断は、あくまでも各事業年度末時点において合理的な判断基準に基づいて行うものです。このため、例えば、当事業年度末においては将来的な回復が見込まれないと判断して評価損を計上した場合に、翌事業年度以降に状況の変化(株価の上昇など)があったとしても、そのような事後的な事情は当事業年度末時点における株価の回復可能性の判断に影響を及ぼすものではなく、当事業年度に評価損として損金算入した処理を遡って是正する必要はありません」と留意的に示しています。

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